『素粒子』の映画化の難しさ

フランスの小説家ミシェル・ウェルベックの『素粒子』(Michel Houellebecq, Les Particules élémentaires)は1998年にフランスで刊行され、世界30ヶ国で翻訳されている彼の代表作品である。2006年には、ドイツの映画監督、オスカー・レーラーによって『素粒…

涙の出る穴を見つけた。

この場所の全体が雲の影に入っていた。うとうととして目がさめると女はいつのまにか、隣のじいさんと話を始めている。客はもうとうに散ってしまった。大地を震わす和太鼓の律動に、甲高く鋭い笛の音が重なり響いていた。天空が最初に全世界を支配した。死に…

きんぎょ

夜勤のバイトに備えて家のソファで微睡んでいると、ばあちゃんが窓をコツンコツンと叩いた。 「これ、きんぎょ!きんぎょ買ってきたから…えさも買ってきたよ!」 そう言って金魚が6匹中で泳いでいるビニール袋をテーブルに置いてまたどっかに行っちゃった。 …

ピカデリー

早稲田で撮影のお手伝いをしていたら終電を逃してしまって、どうやって時間を潰そうかと思ったら財布には600円しか入ってない。これじゃあカラオケにも満喫にも行けない。戸山公園に雑魚寝するにも、日中は春の顔を見せておいて底冷えする2月下旬の夜は油断…

優しさで流れる川~『寝ても覚めても』~

濱口竜介監督の商業映画デビュー作となる『寝ても覚めても』をテアトル新宿での上映終了前日に観ることができた。前々から評判が良いことは知っていたんだけれど、このところ映画館に足を運ぶことへの面倒臭さが上回ってしまってなかなか行けなかった。そん…

メタモンのように生じて時間の経過とともに形こそ穏健に変わってきたがメタモンは我を持たない。よって形状記憶合金のようにふやけた吐瀉物がうろうろとのたうちまわる。そんな地下室を持ってしまったと自称する自意識を拗らせつつある住人は形式的な節目に…